マシバシイネツルカモ

博士やポスドクから企業への就職

日経で「日本企業、博士採用増で生産性低下 日経センター分析」という記事が出ていました。(追記:後日題名が変更されたため、下記の表示も変わっています。)

 

www.nikkei.com

 

総務省日本経済新聞社の調査から分析した。全社員に占める博士号取得者の割合が増すと、1人当たりの売上高などにあたる労働生産性が低下していた。2000年代の大半で同じ傾向だった。

 同センターは(1)企業の現場で適切な役割が与えられず、博士人材の専門能力が生きていない(2)提案力や構想力が乏しく、企業の応用研究に対応できる博士人材が大学で育っていない――などとみている。日本企業の雇用制度では優秀な人材が定着しにくく、大学の研究教育環境も世界に劣るとの見方もある。

 私も海外ポスドク後に日本で企業に就職し、情報がないこともあり苦労したため、いくつか経験を書いてみようと思います。

ちなみに私は一貫してがんの基礎研究をしており、元々理学系ではありますが進んだ研究室の関係上、医学博士となりました。

博士課程最後の年は、研究者となり生きていくつもりだったため、ポスドクしか選択肢にありませんでした。

Nature Jobsで公募されていたポスドクに興味深い研究室があり、たまたま私自身が特殊な技術を持っていたこともあり、卒業後はアメリカでポスドクをしました。

しかし博士卒業と同時に結婚し、かつ妻が妊娠して職もやめていたため、3~5年でそれなりの雑誌に投稿できることができないようであれば、民間企業に進路をシフトしようとは考えていました。

アメリカでのポスドク生活は土曜の半日以外は研究室におり、かなりブラックな生活を送っていましたが、なかなか成果は上がりませんでした。一方でプライベートでは子供が生まれ、私1人の収入で家族3人を今後支えていかなければならないプレッシャーが日々増大していきました。妻との関係もしだいに喧嘩ばかりになり、このままではプライベートも仕事も立ち行かなくなると判断し、日本の民間企業への就職活動を開始しました。

しかしポスドクからの民間企業への就職情報(特に海外ポスドクのものは)はとても少なく、ネットでいくつかのブログを調べて参考にしました。

その情報をもとに、いくつかの中途採用仲介業者や企業への登録をしました。そもそもポスドクは新卒採用なのか中途採用なのかということさえ分かっていませんでした。

海外から日本の就活をする際、移動費と移動時間がネックになります。そこで短時間で決めることができるということが追加条件でもありました。

民間企業の新卒、中途採用は、H立関連(新卒)、A化成(中途)を申請しました。

A化成(中途)は書類選考はとおりましたが、次の面接で落ちました。

H立関連(新卒)は書類選考がなかなか進まず、時間切れになりました。

 

中途採用仲介業者は、大手のリクナビを含め製薬に特化した業者などに登録しました。

経験として私の経歴では、リクナビにははぼ派遣企業しか情報がなく、ほとんど利用しませんでした。博士持ちのような、ある程度専門性を生かすべき人材は、分野に特化した仲介業者を選択したほうが良いかと思われます。

がんを研究していたこともあり、製薬は待遇も良いことから、後半は製薬に絞って活動をしていました。

その結果、就活開始から5か月程度で、とある外資系製薬会社に正社員として中途採用されました。

 

製薬会社で書類選考が2つほど通ってからは、航空機代やホテル代を節約するため、東京で2週間程度ウェークリーマンションを借りて、就活をおこなっていました。

先の見えない不安と家族を養わなければいけないプレッシャーで、今思い出しても非常につらい日々でした。最悪コンビニバイトしながらでも就活しようと考えていました。

おそらく派遣企業であればもっと早く決まっていたとは思いますが、今となってはしんどくても我慢してそれなりに大手の会社に就職できて、よかったと思います。結局就活は相手企業との相性やタイミングがかなり重要です。あせらず待てば必ず自分を必要としている企業が現れるからです。

今はまた別の会社に転職し、家族も4人になり、私1人の収入で東京でそれなりに暮らせています。

民間企業のサラリーマンになって今は良かったと思います。私自身の能力はアカデミアで研究を続けるよりも、ビジネスの世界で専門性をもって働くことのほうが向いていると分かったからです。自分の能力がどこにあるかは、新しい世界に飛び込んで何年かしないと分かりません。しかし職歴上も2年間に何もできていないと次の転職が厳しくなります。2年を目安に合うあわないを見極めるべきでしょう。石の上にも3年との助言をいただいたことがありますが、勝てない勝負に時間を費やすことは、変化の激しい今の世界では大きなリスクになります。誰も人生の選択に対し責任とってくれないので、情報を集め、自分にとって最良の選択を勇気をもって選ぶことも重要ではないでしょうか。