マシバシイネツルカモ

自戒

水は低きに流れる。

初心忘るべからず。

年を取り、変に経験値がついてくると、初心を忘れてしまいます。

自戒をこめて、好きな司馬遼太郎の小説「項羽と劉邦」を見直してみます。

 

 この中でも劉邦の下記のエピソードが好きです。

「あなたは、無道の秦を誅滅されようとしている。まことでありますな」

「まことだ」  

劉邦は、二人の婦のほそい肩を同時に愛撫しつついった。

「私は、あなたよりも年が長けている。しかもあなたに物を教えようとも している。ここに立っている酈食其は高 陽の門番でなく、長者です。あなたがどうしても秦を誅滅したいというなら、縁に腰をおろしたまま長者に会うようなことをなさらぬほうがよい」

「アア」

  劉邦はあわてて二人の婦から布をとりあげてみずから足を拭き、上へ あがってすぐ衣服をととのえた。

  あらためて 酈食其を案内して上座に据え、自分はさがって身をひくく し、聴く姿勢をとった。

(思ったとおりの男だ)  

と、酈食 其は満足し、劉邦のために秘策をさずけた。

司馬 遼太郎. 項羽と劉邦(上中下) 合本版 (Kindle の位置No.6374-6382). . Kindle 版.

「おわかりになりましたか」

「わかった。わしはとうてい項羽にはおよばぬのだ」  

と、真顔でいった。

  韓信は、ここで劉邦に感心すべきであったろう。もし項羽にこのよう なことを言えばふたことも言わぬまに煮殺されるにちがいない。

司馬 遼太郎. 項羽と劉邦(上中下) 合本版 (Kindle の位置No.8259-8262). . Kindle 版.

 普段は非常に無作法な劉邦ですが、人に意見をされたときは、どんな批判的な内容であっても真摯に受け止めるその姿勢に、子供ながらに感動したことを覚えています。

 いくつになっても、そのような大人でありたいと思います。